それでもあなたの傍に

『Sept Couleurs 2』より一部掲載

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 あまりにも眠くて、一瞬意識を失いそうになった頃、タクシーが自宅の前に着いた。

 だが、辿り着いたのはいいものの、意識がほとんどない矢神をタクシーから降ろすのも、部屋まで歩かせるのも大変だった。

 やっとの思いで抱えた矢神を部屋のベッドに寝かす。



「矢神さん、着きましたよ。矢神さん」



 何度か声をかけて起こしたが、全く反応してくれなかった。

 このまま寝かせておくのもいいかもしれない。

 部屋の灯りを消して部屋から出ようと思ったら、矢神が寝苦しそうにワイシャツの首元に手をかけて、そのまま動きが止まった。

 遠野は部屋を出るのをやめ、矢神の傍に寄る。



「ネクタイ、緩めますよ」



 矢神が苦しそうにしているので、遠野は矢神のネクタイを緩め、ワイシャツのボタンを一つ外した。

 窓から漏れる薄明かりの中、矢神の細い首筋が目に入った。

 遠野は迷わず指をそっと這わせる。指先に触れた肌が思っていた以上に柔らかくて、ある感情を引き起こしていた。

 そのままボタンを外していき、今度は鎖骨に触れた。

 普段触れたくても触れられない場所に手が届く。

 くっきりとしていてとても綺麗な鎖骨だ。

 矢神が目を覚まさないことをいいことに、気づけば首筋に唇を落としていた。

 唇で首筋に触れながら舌で舐める。鎖骨も舌で何度もなぞっていった。



 これが矢神さんの味――。



 いつもなら我慢できることが抑えられなくなっていた。

 矢神の身体を起こし、緩んでいたネクタイを引っ張って取った。ワイシャツのボタンも全て外し、脱がして上半身裸にさせる。

 遠野も自分の来ていたTシャツを焦るように脱いで、矢神を抱きしめた。

 温もり、そして肌と肌が触れ合う感触を味わう。

 矢神の身体は、細いというよりも薄いと感じた。



「矢神さん……」



 背中を指で撫で擦る。矢神の肌はとても温かい。

 ずっと触れたかった。自分の腕に抱きたかった。

 感極まって涙が出そうになった。

 一端身体を離し、矢神の唇に口付けしようとして、遠野は思い留まる。

 キスは意識がある時にしたい――そんな乙女のようなことを考えていた。

 再び矢神をベッドに寝かせて、脇腹から細い腰を掌で何度も擦る。

 全く反応を示さない矢神をつまらないと感じた。

 目を覚まされたら困るのに、気づいていないのも嫌だという。まるで矛盾していた。

 遠野は矢神の腰の辺りに跨り、胸の突起に静かに触れてみる。指先で、ゆっくりと優しく弄った。

 その行為が嫌だったのか、眠ったまま矢神が腕で胸を隠すような仕草をした。その腕を掴んで押さえつけ、弄るのを繰り返す。

 突起は硬くなり、ぷっくりと勃ち上がった。

 矢神の眉間には皺が寄っている。そのことに遠野はなぜか嬉しくなった。

 自分が触ったことで反応してくれている。そのことに喜びを感じていた。

 次は胸に顔を近づけ、舌先で弄ってみると、小さく呻くような声を上げた。

 調子に乗るように、舌で突起の周りをじっとりと舐めたり、それを口に含んだりした。

 その度に、矢神は身じろぎ嫌がるそぶりを見せるが、目は覚まさない。

 口に含んで時折吸ってみれば、首を横に振りながら、悩ましい声と共に吐息を漏らした。

 遠野は平静ではいられなくなっていた。






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